某の乙女ゲーム遊戯録

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幻奏喫茶アンシャンテ カヌス 感想

幻奏喫茶アンシャンテ

カヌス・エスパーダ(CV:梅原裕一郎)の感想です。ネタバレあり。

 

- 業を負いし者 -

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攻略はこちら:幻奏喫茶アンシャンテ カヌス 攻略

カヌス 個別ルート感想

幻奏喫茶アンシャンテ、記念すべき1人目はカヌスを攻略しました!公式さんのおすすめ順を素直に上からなぞろう作戦です。

 

1人目なので少しだけ共通ルートの感想をば。

 

しょっぱなから笑わせてくれたのが、こちらのネームプレート

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「あ、こういうネタはさんでくる作品なんだ…!」と一気にゲームに対する興味を掻き立てられましたね。

『最初の不審者』『兜の不審者』『優美な不審者』『粗暴な不審者』って……(笑)

そしてこのまま会話が進んでいくのがシュール。琴音ちゃん視点だと当然こうなりますよね。特に「優美な不審者」という字面のミスマッチにやられました。

いきなりくすっとさせられた不審者シリーズなのでした。

 

また、その後に琴音ちゃんが全員を見回してそれぞれに対する第一印象というか感想を挙げていくところで、カヌスには沈黙からの「不審者」の一言。

これにも笑いが。ちゃんとオチつけてくるところが素敵です。

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カヌスさん、この中ではかなり誠実なまとも枠なんですけれどね。だからこそ、この最初の琴音ちゃんからの警戒MAXの不審者扱いがギャップがあって面白い。

 

あとはパワハラ上司の迫力がすごかった。声優さんの迫真の演技。ゲームから聞こえてくるボイスのはずなのに、自分が怒鳴られているように感じてしまうほどでした。怒鳴られることにトラウマがある人とかだったらかなり怖かったんじゃないでしょうか。

こんな上司の下で働いていた琴音ちゃん、よく頑張りましたよね。ハイパーブラック。

もはや純黒だよ。逃げたいのに逃げられない、っていうのも昨今のブラック企業の負のスパイラル現象を感じさせられてリアルでした。自分も会社員だからこそすごく現実的に感じられました。

 

そして、本格的に喫茶店を開業するに向けて準備していくシーン。ここで『食品衛生責任者資格』とか『営業許可証』といったワードが出てきますが、お店が1日でぱっとできるものじゃないというのが現実的です。こういった部分で細かいところなので割愛されがちだと思うのですが、アンシャンテではこんな所までしっかりシナリオに盛り込んでくれています。都合よくいかないところにすごく好感がもてました。

 

それから『SNS』『スマホ』『ラスボス』といったワードが人外であるキャラクター達からぽんぽんと出てくるんですよね。日常に溶け込む異世界といいますか、ファンタジーとリアルがうまく融合された世界観を表現できているなあと感心。違和感が全くなかったです。

 

 

さて、ここからはメインのカヌスの感想を。

 

まずは何といっても見た目のインパクトですよね。首から上が存在しない(正しくは“見えない”でしたね)攻略対象なんて今までの乙女ゲームで存在しただろうか。

え、ほんとにこの人攻略できるの?と最初は疑問に思っていました。

 

そんなカヌスですが、首から出ているオーラの色の変化や強弱、そして声色でしっかり表情がわかるように表現されていました。はしゃいでいる時にオーラの色が変わったりするところとか、可愛いですよね。さすが(?)妖精です。

 

カヌスの正体は『首無し騎士』である妖精の『デュラハン』でした。こちらは最初から申告のあった通りですね。

そんな彼が妖精界『メディオ』で行っている仕事に何やら秘密があるようで、それを解明して解決していくのが個別ルートのストーリーの核になっていました。

(余談ですが、デュラハン自体は物語でちらほら見かけることがあるので伝説としての存在は知っていましたが、妖精だということは初めて知りました。どう見てもアンデットっぽいんですもん……)

 

1章のほのぼのパート。寝たふり事件。ミシェルに「ゲスパーダ」と言われているところにくすっときました。

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こう流れるようにネタを挟んでくるのいいですよね!

 

2章~最終章にかけてカヌスの真実が明かされて、問題が解決されていきます。

カヌスの秘密は、同族殺しでした。『死を告げる妖精』として、“死”という概念のない妖精を殺し続けていかなければならない使命を背負っていました。

(もともとデュラハンとは伝承によると”死を予言する存在”とされていますが、これを上手く生かした設定になっていましたね。)

 

秘密が琴音ちゃんにバレてしまったときは当初「無限に増えていく妖精を、生まれてくる妖精の分だけ殺し続けなければならない」という建前を使っていましたが、実際はそうではなく、「世界樹に生贄を捧げるために殺している」というのが真実なのでした。

 

妖精メディオという世界そのものである世界樹は、その活動を維持するための養分が必要となります。その糧とするために、女王が選定した妖精を殺して回る。世界樹が暴走して、それより多くの妖精を殺させないために、世界を守るために同族を殺すという義務を課せられた存在が、カヌスなのでした。多くを守るために少数の命を犠牲にすることを余儀なくされ、何百年も繰り返してきました。

 

妖精界メディオは、一見美しく清廉な世界に見えて、その平穏は犠牲の上に成り立っている。500年前までは花嫁だけで犠牲は足りていたけれど、事件があってから死を告げる妖精が他の妖精たちを殺して世界樹に与えなければならなくなってしまった。

 

個別ルートの冒頭で、「苦しむ顔や涙を誰にも見られずに済むから、首無し騎士に生まれた」と独り言ちていたのがとても寂しいです。この言葉が表しているように、カヌスはずっと自らの行いに対して苦しみ続けていました。

 

その傷ついた心を癒してくれる空間が、喫茶アンシャンテで。彼は安らげる、安息の場所を求めてアンシャンテに来店していました。女王ティターニアと宰相ヴェンニーアという、言ってしまえば「共犯者」として自分の行いを理解してくれる存在はいても、実際に戦っているのは彼1人で。罪の意識は膨らみ続けるばかりだったのだと思います。それ故に同じ世界の妖精達からは恐れられいて孤独。彼がアンシャンテに部屋を持っていて泊まることが多いのも納得です。

 

そんなカヌスは、琴音の営業するアンシャンテに通いつつも、ずっと祖父である「草庵のアンシャンテ」を見ていました。草庵は何も言わず見守ってくれて、琴音は自ら踏み込んでいく。彼は前者のアンシャンテを望んでいました。

 

そして、琴音を突き放して明確な線引きをするカヌス。心に踏み込んでこられるのが怖かったのかな。理解されることが。琴音を守るため、危険から遠ざけるためというのもあると思います。本来優しい人が相手を傷つける言葉をあえて選ぶのって辛いですよね、きっと。

 

2人のすれ違いが解消して、ちゃんと琴音のことを見てくれたシーン。「店が好き」ってもう琴音が好きじゃないですか。告白やん。っていうか告白したよ!「もちろん貴方自身も好きだ」って……もう告白ですよね???

 

 

最後はアンシャンテの常連たちと協力して琴音を取り戻し、世界樹を打倒することができました。

助けにきたときの、「貰い受ける!!」って高らかな宣言がとってもかっこよかったです。まさにお姫様を奪還しに来た騎士って感じで。

 

もともと『死を告げる妖精』は、世界に『死を告げる』ために、その記憶を継いで生まれ続けてきたのかもしれませんね。

 

そしてこの物語でのキーパーソンとなったヴェンニーア。まさか彼が敵ポジションだったなんて……!といっても、敵意むき出しの単なる「敵」っていう感じでもないんですよねこれまた。

 

冷たく見えてティターニアとカヌスのことを一番に思っていて。カヌスのことは自分のもう1人の姉である「バンシィ」の運命も重ねているのだと思うけれど、2人のために、2人に向かって激昂した。ヴェンニーアの行動は身勝手ではあるけれど、それってすごいことなんですよね。相手を気持ちを考えすぎて足踏みして結局行動できないよりずっといい。やらない後悔とやる後悔といいますか。大切な人の幸せのためなら、たとえその相手に嫌われたって構わない。心根が素直で強い人なんだなあと、ちょっと憧れてしまいました。

 

そして琴音を玉座に突き出したときは唐突に見えましたが、回想では「対価が友と呼べる愛しい存在」と心のうちを吐露していて、葛藤があったことがわかります。

実際、自分をもソウイルイーター達から庇おうとする琴音を見て「できるなら解放していっそのこと僕が変わってもいい」という後悔と苦しみを見せています。始めは企みのために利用できるか見極めるためにアンシャンテに来店していたようですが、そこで琴音と触れ合って見せた笑顔は嘘じゃなかった。それが本当に良かったです。

 

エンディング入りする直前のシーンも大好きです。

 

琴音が世界樹と同一化したおかげで性質が人間でなく妖精寄りになってしまった影響で、カヌスの顔が見えたで“あろう”演出がよかった!!!

短く、あえて言葉がなく。琴音ちゃんの幸せそうな笑顔だけがプレイヤーから見られるあのスチル。

 

プレイヤーにはカヌスの顔が見えなくてよかったと心の底から思いました。

顔が見えなくても、魅力的なキャラクター。その部分が最後まで壊されませんでした。

 

琴音にはどんな顔が見えたんでしょう。きっと、プレイヤーそれぞれが思い浮かべた顔があるのだろうと思います。その思い浮かんだ顔が、プレイヤーが描くカヌスということでいいのではないかなと。

 

エンディング後はお待ちかねの愛の告白シーンです。

 

「愛している」が直球で、まっすぐすぎて心に響きました。乙女ゲームではよく出るワードではあるんですが、すごくグッときました。シチュエーションもいいですよね。美しい花畑を背に、お姫様の手を取って跪く騎士。花嫁になってと告げるのも良い。手の甲へのキスも素敵です。

 

そして生涯を共にすることで、今後起こるであろう寿命の差や顔が見えないことで起こるすれ違いなどの苦難の可能性も提示してくれるところに、誠実さを感じます。

琴音ちゃんが、無力だけど居場所になって心を守ると誓うのも感動です。彼が望んでいたアンシャンテではなく、自分が作るアンシャンテという場所とともに。

 

これからは命を育む妖精として生きていくというカヌス。植物を育てるのが好きな彼だから、きっと上手くやっていけると思います。やっと自分のやりたいことができますね。

 

本作ではコンプにハッピーエンド以外のエンドを回収する必要はありませんが、それなのにカヌスのノーマルエンドがよかった……!

(※ゲームオーバーになる中途バッドエンドではないバッドエンドを、便宜上“ノーマルエンド”と表記しています)

 

物悲しかったです。今度は物言わぬ花嫁となった琴音を生き永らえさえるために、妖精殺しを続けるカヌス。

妖精に寿命がないため、「生きることに飽きた者に安らかな死を与える」ことが死を告げる妖精の本来の役目だということもここで明かされていました。その通りに行動するならば、琴音を殺してあげる方が彼女のためになるはずなのに。

 

もちろん琴音を殺してしまうと世界樹の暴走にも繋がるということもありますが、このエンドではただただカヌスの「琴音に生きていてほしい」と思う気持ちが強かったように感じられました。世界のため、琴音のため、そして自分の気持ち。相反するそれらに板挟みなって、カヌスの苦しみが伝わってくるも、静かで美しい結末でした。

 

総括すると、首から上がない攻略対象というのが本当に斬新でした。

顔がないけど表情豊かで、今どんな顔をしているのかちゃんとわかる。表情で表せないぶん、言葉を真摯に伝えてくれるから。何より見た目の厳つさに反する心根の優しさで安心できます。素敵なキャラクターでした。

 

次はイグニスを攻略します。

 

P.S.プロフィールで「体重だけは絶対に秘密」って……(笑)そういうところが可愛いんだよ~。

 

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