某の乙女ゲーム遊戯録

アラサー喪女の乙女ゲーム堪能記録。

幻奏喫茶アンシャンテ ミシェル 感想

幻奏喫茶アンシャンテ

ミシェル・アレックス(CV:赤羽根健治)の感想です。

ネタバレ注意。

 

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- 永遠の孤独を -

 

⇒攻略はこちら(幻奏喫茶アンシャンテ ミシェル 攻略)

ミシェル 個別ルート感想

幻奏喫茶アンシャンテ、いよいよラストの我らが『魔王さま』ミシェルの感想です。ゲーム自体は1週間程度でコンプしたのですが、なんやかんや感想全て書き上げるまでに発売日から1か月が経ってしまいました。

 

そんな感じでできあがった本記事ですが、1万字超えました。誰が見るのよ……。もう読まなくてもいいからとりあえず皆さんに言いたいのは、ミシェルが好きな人はプロローグから2周目やってください、ということ。読んでくださる方は、稚拙な文章ではありますがこの後もお付き合いくださいませ。

 

2周目がめんどくさい!という方は、本記事の中盤でプロローグから共通ルートなどを振り返っていますので、そちらだけでもよかったら目を通してみてくださいね。

記事内リンク>>【ミシェル】プロローグから振り返る

 

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ミシェルの第1印象は、『魔王さまなのに予想以上に軽いな』でした。公式のキャラクター紹介を見て、ある程度はノリの軽い人なんだろうなあ~とは思っていましたが、予想を上回ってのほほんとしてらっしゃいました。そのくせ、チートを自称するのも納得の大きな力を持っていて。不思議な雰囲気を持った青年でした。

 

そしてミシェルルートが解放されるまでに、少しずつ謎が出ていました。何者にも絶対に勝てる切り札を持つこと。度々見せる、自分が誰も救えないことを気にしている姿。毎日必ず魔界に帰らなければならないこと。イルのルートでは、魔界にギリギリに帰ろうとした時に息が絶え絶えになっている姿も見られました。

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また、どのルートでも仲間を大切にすることを一貫しています。自分が万能すぎる余り一人で抱え込み、他人に頼ることが苦手な少し不器用な一面も。そんな、いつも飄々と笑っているミシェルの裏にいったいどんな秘密が隠されているのか。いよいよ謎が解き明かされる個別ルートに期待値爆上がりでした。

 

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ルート序盤では、琴音がミシェルともう少し一緒にいたいという気持ちからアンシャンテに住むよう彼に提案しますが、魔界の事情があるからと断られ、そしてミシェルは琴音に『嘘をついている』ということを告げます。

 

そして、ここにきてはじめて出てくる魔界の住人、魔族のアスモデウスが登場します。実はこのちょっとお馬鹿そうなアスモデウスこそが本当の魔界の王で、ミシェルは魔王ではありませんでした。ミシェルが魔王じゃないって、彼のルート入りする前に気づけた乙女います?????魔王というのがミシェルの嘘だなんて、このゲームを始めたときからまったく疑いもしなかったので衝撃的でした。

 

さすがに個別ルートに入ってから、ミシェルが自分の世界に戻っていった後に『皆』に語り掛ける声が反響していたので、”姿が変わってるのかな?”とか、その『皆』から”返事が返ってくることはない”とミシェルの言葉を聞いていた誰か(ノア)が言っていたことから、何かおかしいな~とは思い始めましたけども。アスモデウスが出てきて、魔界の城でどの世界を侵略するか考えていたふわ~っとした言葉もあのキャラなら言いそうだな……と思ったあたりから私の中でもだんだんとミシェルが魔王ではないんじゃないかという疑惑を持ち始めました。名前的にも“アスモデウス”っていかにも魔王っぽいですもんね……もろ悪魔の名前。むしろ“ミシェル・アレックス”ってすごく人間っぽく感じます。

 

では、魔王ではないミシェルは、いったいどこの誰なのか。そんな彼の正体は、触れたもの全てを灰に帰す滅びの力を持った、異形の者なのでした。魔界でも天界でも妖精界でも獣界でもない、名も無き第5の異世界。彼が世界に付けた呼称である通称『終わりの世界』に棲む異形こそがミシェルの本当の姿でした。ラスボスを超えるラスボス。世界に滅びを与える存在。

 

イグニスルートで発した、”何者にも絶対に勝てる力”というのは灰化の力だったんですね。異形の姿だと、ミシェルの意思とは関係なく触れたもの全てを灰にしてしまうんだとか。

また、そのミシェルの力とは別に、彼の本当の世界である『終わりの世界』自体も、生命が住むには適さない環境で、吸い込む空気そのものが有害であり、種族関係なく迷い込んだ生者に等しく死を与える世界なのでした。

 

ミシェルも元はただの人間で、数万年前の創世記に生まれ、人類の新天地を求めた移住計画のために『終わりの世界』に辿り着いた不幸な青年でした。

 

イルルートで明かされていたように、古代の人間界の文明は現代よりも遥かに進化し最高域まで達していました。そしてある大災害がきっかけで人類滅亡の危機に瀕し、その災害に脅かされない世界を探すために、人類は『ゲート』を積んだ舟で各世界に旅へ出たのです。だからアンシャンテにあるようなゲートはすべて人間界に繋がっていたんですね。

妖精界へ世界樹の種を持ち込んだり、獣界で界喰狼と戦い世界のルールを確立させたり、天界へ最新鋭の文明を持ち込み神を生み出したりと、各世界の成り立ちに人間が関わっていた謎も、この時の計画によるもの。

伏線が回収されて謎がいろいろと解けていく~~~!!いよいよ物語が終わりに向かっている感がして少し寂しかったり。

 

そして、計画で『終わりの世界』に辿り着いたミシェルは、その世界に迷い込んだ中でたった一人の生き残りとなるのでした。殺してくれ、とのたうち回りながら、数百年も身体を作り替える痛みに耐えたミシェル……環境に適応するために進化したのが異形の身体でした。「人間に戻りたい」と呟いたその一言が悲痛で。

 

そんなミシェルも最初は諦めずに元の世界に帰ろうとゲートや舟を探していたものの、それも叶わず諦め、未来永劫この終わりの世界で生きる覚悟を決めてしまいます。ときどきゲートが開いて落ちてくる迷い人を看取り、墓を作って過ごす日々。返事の返ってこない中、「ただいま、皆」と呼び掛けていたのは看取ってきた無数の墓に向かって。数万数千の命の終わりを看取ってきた灰の墓守。触れたら灰にしてしまうため、助けることもできず。他ルートで「俺の力は誰も救えない」と憂いていたのはこれだったんですね(´;ω;`)ホールから落ちてくる人が、誰か1人でも自分と同じように環境適応をして生き延びないかという期待も看取っていく中であったと思います。結局死んでしまう命を見て、何度も何度も希望を打ち砕かれてきたんだと思うと本当に辛い。

 

死ぬこともできず、何万年も絶望と孤独に苛まれてきた彼に、希望を与えたのが幼い琴音でした。イルルートといい、幼い琴音ちゃんって天使か何かじゃないですかね???女神様。

 

琴音が幼いころ、偶然開いた空間の亀裂により2人は出逢い、呻くミシェルに対して喉が渇いていると勘違いした琴音が、彼に自ら淹れた珈琲を手渡します。

 

はじめは琴音のことを殺そうと思って手を伸ばしたというのも驚きでしたね。そんなミシェルに対して純真無垢な幼い琴音はミシェルに珈琲を手渡し、彼も毒気を抜かれてその珈琲に口をつけます。数万年ぶりに触れた人の温もりと気遣いに無くした心が戻ってきて、「お礼を言いに行く」という生きる目的ができました。一方的ではありますが、この琴音にした約束を糧に再奮起し、ミシェルは人間界に再び足を踏み入れることが叶ったのでした。約束を果たすことを希望に、絶望から立ち直り、以前に数万年かけて諦めたゲートの捜索を開始し、再び人間界に行く術を今度は10年程度で身に付けたんですよね。その努力たるや計り知れません。ミシェルに温もりを与え心を救ってくれたのが琴音だったのでした。彼が珈琲な好きな理由と、「最高の一杯」の謎が解けた瞬間です。

 

この時点でもう1回最初からやり直したくなったーーーー!!!!今まではよくわからなったミシェルの発言や、何気ないセリフがここにきて一気に意味を持ってきます。

冒頭の琴音との出会いや、マスター修行で淹れたお世辞にも美味しいとはいえない珈琲に対しても美味しいと言ったこと、珈琲を淹れる練習で語った最高の一杯、天咲島のご褒美のとびきりの一杯で喜んだこととか。

はい、しっかり冒頭からもう1周してきました。

 

ということで、ここでプロローグから振り返ってみましょう。

 

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まず、プロローグでの琴音とミシェルの出逢い。「再会」と言った方が相応しいでしょうか。

琴音が祖父の訃報を受けてアンシャンテを訪れ、ゲートのプレートをCLOSEDからOPENへ変えた瞬間に鳴り響いた来店を告げるベルの音。

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「――やっと、見つけた」

という言葉と共に訪れる、壊れ物を扱うような優しい抱擁と、とても大切なものを慈しむようなミシェルの潤んだまなざし。「もう二度とないかも、と思っていた。こんな日が来てくれるなんて」と、まるでこの日を夢見ていたかのように喜びを噛み締めているんですよね。

 

所見では何か琴音と関わりがあったのかな?と思いつつも、そのあと不審者騒ぎからの皆の登場というドタバタコメディパートに入ったこともあり、店にもう一度来れたことに対しての言葉なのかなーくらいに思ってそれ以降気にしてませんでした。店に対してにしてはやけにオーバーリアクションだなあという違和感はあったんですが、やっとキャラクターが揃ってこれからゲームが始まるんだというドキドキ感に疑問が完全に吹き飛んでましたね。

 

“もう二度とないかもと思ったのに”はアンシャンテではなく琴音個人に対してで、数万年に渡る時の中で奇跡ともいえる一瞬の邂逅から、再会を希望に立ち上がって、それから数十年を経てやっと琴音に会えた感動のシーンだったんですよココ。

草庵に追い出されてからは、本当にもう二度とゲートがOPENになることがないかもしれない……、きっと終わりの世界で1人そんな扉を見続けて不安で寂しかっただろうと思います。また永久の孤独が続くかもしれない、と。そして、やっと開いたゲートの先には“あの”琴音がいた――まさに奇跡です。

 

そしてプロローグから始めるとこの後オープニングに入りますが、良い意味でオープニング詐欺ですよ。ほのぼのファンタジーと思って騙された人がきっと多数いるハズ。

 

そして1章。

「ほんの短い間だけだった」とミシェルと会ったことがあるか問う琴音に返した言葉。

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このセリフから幼い頃に出逢っていただろうことは想像できますが、あんなに重い事情があるなんて想像できないよ。そして、「覚えてないのも無理ないよ」というミシェルの声色がほんの少しだけ寂しそうで切ない。

 

この、琴音と再会できてからのミシェル視点が見てみたいです。いったいどんな思いで琴音のことを見守っていたんだろう。

 

それから琴音が店を継ぐかどうか迷っている場面。琴音の幸せを願って、その意思を尊重したいと思っているからこそ、無理に店を継いでと言わなかったんでしょうね。

「いろいろ話がしたいから、また明日きてほしい。君のことを知りたいし、自分のことを知って欲しい。」というミシェルの言葉に、琴音がどうしてかと問うと、「運命の出会いだから」と茶化すように答えます。

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これ、「なんちゃって」と誤魔化したけどめちゃくちゃ本心からの言葉なんですよね。ミシェルが生きてきた数万年の中でった1人との、たった1度の出逢い。運命極まりない。

 

このセリフも、最初に聞いた時は軽いノリに聞こえるのに、全てを知った後に思い返すと特別な意味を持って聞こえるのがすごいですよね。

 

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その後のミシェルの「また明日」という言葉にさえ感動させられます。それに対して琴音が“また明日”を言うのが久しぶりというのに対して、「俺もだよ」とひたすらに優しく笑うのがもう。“また明日”を言えることが奇跡なんだよねほんとに。

 

それから2章の珈琲試飲のシーン(※ダジャレではない)

一番乗り気だったミシェルが、感想を求めてもだんまりで、あげく「何の話?」とまで言うほど上の空。返ってきた言葉が「考え事をしてて……」と。魔界の様子について考えいたと誤魔化していましたが、絶対に琴音の珈琲を飲んだことで感慨にふけっていたに違いない。かつて自分が生きる希望をもらったもの、そのものである『琴音が自らの手で淹れた珈琲』を十数年ごしに手に取ることができのだから。

 

そりゃあどれだけ皆が“不味い”って言ってもミシェルだけは“美味しい”って言うよね。お代わりを所望するほど心の底から“美味しい”と告げるミシェル。そして皆に自分の好みについて語られたあと琴音をじっと見てから言うセリフ。

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「永年生きてきたけど、珈琲は世界で一番好き」だと。このセリフ、すっごく穏やかに言ってくれるんですよね……!!それだけで涙腺が緩みます。

 

それから、珈琲を淹れる練習にミシェルに付き合ってもらった2章で、こんなセリフが出ていました。

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「……美味しい珈琲をありがとう、琴音」
ミシェルルートを既にクリアしている乙女達ならこの言葉の重み、分かりますよね???ミシェルの生きてきた理由ですよ。ここでお礼言えてたんだ。これ共通の2章ですよ。こんなところでこんな大きなセリフが出ていたなんて。

 

もちろん琴音は約束のことは知らないので、本当の意味で「あの時の飲み物のお礼を言いに行く」という約束を果たせたわけではありませんが、それでもきっと今飲んだ珈琲に対してだけでなく、十数年前に飲んだあの珈琲のお礼も入っていたんだと思います。

 

そのあと、ミシェルはお礼にと琴音へ珈琲を淹れます。「珈琲は自分で淹れて飲むのもいいけど、誰かに淹れてもらった方が美味しい。その気持ちを君に贈ることができてよかった」と告げるミシェル。琴音は幼い頃に、そのことを祖父から教わっていました。「珈琲は自分で淹れるより誰かに淹れてもらった方が美味いんだ」と。その教えから、幼い琴音も異形のミシェルに珈琲を淹れたんじゃないかなあと。そして今度はミシェルが琴音へ。繋がっていく~~~。

 

この辺とかほんとにミシェル視点欲しい。FDに超超超期待です。

 

琴音の“なぜ出会った頃から親切にしてくれるのか”という問いに対するミシェルの答えも、また意味が深い。皆さん確認してみてください……。

天咲島でご褒美の『とびきりの珈琲』になぜあんなに歓喜したのかも意味がわかりましたね。

明確に語られてはいませんでしたが、あの思い出のカップにもう一度、珈琲を淹れてもらうこともミシェルの長年の夢だったんじゃないかなあと。

 

2周目以降は何の気なしにスキップしまくっていた共通ルートが、ミシェルルートをクリアした後に見るとすごく意味を持って帰ってきましたよ本当に。ミシェル好きの方や、シナリオが気に入った方は共通ルートだけでいいから改めてもう1周してみてください頼むから。

 

そして個別ルート。ミシェルの力が暴走し、アンシャンテに来店しなくなって数日。お互いの「会いたい」という気持ちが繋いだ空間の亀裂による一時の邂逅。琴音は異形の姿に対して全く拒絶せず、恐れも見せません。異形の姿でも話し方や仕草はよく知っているミシェルのままで、琴音にとってミシェルは日常の一部で傍にいてくれないと落ち着かない存在になっていました。そして、琴音は知らずに、あの時と同じように『最高の一杯』をミシェルへ。ここも真実を知ってから見返すと感動ポイントです。

 

全てを知ってなお、温かな珈琲を淹れてくれる琴音にミシェルは惹かれたのだと思います。親愛から1人の女性へ向ける愛へ。はじめは恩を返そうとばかり考えて、彼女の幸せを願い、それを助け見守っていこうとしていて。ただ単純に救ってくれたから好きになったわけではないんですよね。

 

彼の恋愛模様のコンセプトは、“いつも隣にいて当たり前の人に対して、ふと気が付けば特別な想いになっているという日常的にもあり得る恋の移り変わり”と公式サイト様に掲載されていました。ミシェルは恩人として琴音のことを大切に思っていて見守っていたはずでしたが、正体と知ってなお自分と向き合ってくれた琴音を見て、愛する気持ちが湧いてきたんじゃないかなあと。

 

色々と振り返ってきましたが、彼のルート以外でも意味深発言が。

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凛堂ルートで、人外になる薬を彼に飲ませるかどうかの意見をミシェルに聞いたときの「人間が人外に変わるのは並大抵のことではない」という悲痛な面持ちでの発言。「人間が人外に変わるということは、全く別の者に生まれ変わるのと同義。それまでの人生の何もかもを投げ捨てんるんだ」と。これ、最初聞いたときは何も気づきませんでしたが、実際の経験談じゃあないですか……。

 

そして、どのルートでもミシェルが仲間を何よりも大切にするのは、永遠に続くはずだった孤独を知ったからなのかなあと思いました。

 

また、イルに対しては、はじめは同情心から気にかけたミシェル。自分と同じ絶望しかその中になかったから。だから、琴音に救ってもらったように彼もイルを救おうとしたのではないかなと思います。誰も救えない、と言っていたけどちゃんとできてるよ、ミシェル。そして面倒を見てるうちに自分の弟同然に思うようになっていた、とも明言されていました。ソリトゥスに対して酷薄な表情で殺すとまで言ってみせた激情はここからだったのかな。

 

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さて、振り返りはここまで。

 

ずっと琴音を呼び続け、初めてメディオへ行くためゲートをくぐった際に掴んできた手や、天咲島事件の際にゲートへ引き込んだ声は、『終わりの世界』そのものである『ノア』のものでした。

 

ノアも元人間でした。創世記、ミシェルが生まれる数十年ほど前、異世界に渡るゲートに人間が耐えられるかという実験のために、虚無に放り込まれてその世界の礎になった者でした。最初は元の世界に戻りたいと、ミシェルと同じように足掻き、人間界に手を伸ばし続けます。それが原因で起きてしまったのが、人類の異世界移住計画の原因となった『ノアの大災害』。ノアはそんな災害を引き起こしたことに気づき、その手を引っ込めます。騙されて世界そのものになってしまったのに、復讐心で世界を壊そうとしなかった優しい人。しかし、その本質は永きに渡る絶望により歪んでしまいます。

 

ここでやっとプロローグ2~5の意味が分かります。あのプロローグはすべてノア視点で語られたもの。

世界そのものになってしまってから、落ちてくる人々はみな死に絶えて自分は常に孤独。そんな中、ミシェルだけが生き残り、彼が来てくれて嬉しかった。ノアは何度も生きていてくれてありがとうとミシェルに伝えようとしていました。仲間だと。同じなのだと。最初は声が伝わらずとも、自分と同じ立場のものがいてくれて、一緒に絶望し続けてくれる存在を見守るだけで満足だった。けれどミシェルに琴音という救いの手が伸び、世界に縛られなくなって自分だけ置いてけぼり。仲間だったのに、裏切られたと、希望が絶望に変わり。枯れ果てていたはずのノアの心に、失望と絶望と羨望と渇望という激情が宿ります。以前はあれほどミシェルの存在に歓喜していたはずなのに、もはや外に出る彼が帰ってきたところで冷たい感情しか生まれなくなりました。自分と同じ境遇のものが救われたことに不公平さを感じ、彼が救われたなら自分も救われるべきだと考え、そして彼を救った琴音へと手を伸ばしはじめます。「やっと……見つけた」というセリフが冒頭のミシェルと被って――。

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プロローグは各キャラクターをクリアするごとにちょっとずつ解放されていきますが、ミシェルルートでノアの正体がわかるまでは意味が分からないように、上手く作られていますよね。

 

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手を伸ばしたのにそれを何度も跳ねのけられ続けたノア。再びミシェルにのみ手が差し伸べられたことにより、不公平だという気持ちが爆発し、琴音を世界である自分と融合させてしまいます。

ノアはただ寂しかっただけ、ですかね。誰かに一緒にいてほしい。救われたかっただけ。最初はずっとミシェルに語り掛け、手を伸ばし、求めていた。けれどミシェルがそれに気づくことはなくて。そして今度は琴音が現れた。結果的に歪んでしまったけれど、ただ真っすぐな思い故の行動だったのだと思います。

 

そして戻りたいと思っていた人間に、最悪のタイミングで戻ってしまうミシェル。皮肉ですね。あの最強チートな「魔王さま」が、まさか正真正銘の何の力も持たないただの人間になるなんて、誰が想像できたでしょうか。このゲーム、本当に色々と驚かせてくれますね~。

 

……なんだか、最初はすごい髪形だなと思っていたミシェルの頭も、最後はボリュームが物足りなく感じるようになってしまいました。人間のミシェルも良いけれど、魔王Ver.も恋しいよ……。

 

皆で協力して終わりの世界で戦うのもアンシャンテお馴染の展開でしたね!最後までこれでやってくれて良かったな~と思います(*’▽’)ちょっと雑でしたが、ダイジェストで他の世界の問題も解決して大団円に向かっていく描写もありました。

 

最後は、人間として自分を振った琴音にお礼を告げて、友達であるミシェルに殺してほしいと願ったノア。ミシェルはそれに対して最初で最後のお茶会を開き、ノアとの穏やかな決着を迎えます。人間から人外になった3人がつける決着。

ミシェルを救ったのは琴音で。ノアにミシェルと同じ希望を与え感情を揺らしたのも琴音で。でも、最後にノアを救ったのは憎んでいたはずのミシェルだったのだと思います。

 

曲がりなりにも何万年も一緒にいてくれたミシェルを人間に戻したのは本当に親切心だったのかもしれません。自分も救ってもらえるかもと、利己的ながらも幼い琴音とカップを灰化から守ったノアに対して、理由がどうであれそれで自分は救われたと感謝をするミシェル。最後は友情を結んで終幕を迎えます。本当に、もっと早くにミシェルとノアがお互いの存在に気づいていたらどうなっていたんだろうなあ……と考えずにはいられませんでした。

 

そして、ノアが消滅したことによって滅びゆく世界の中で、「魔王じゃなくなってもどんなチートも願いも叶える」といういつもの決め台詞。ミシェル、かっこいい……!!!やっぱり我らが魔王さまはこうでなくては、ですね♪

 

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エンディングは、さすが幻想喫茶アンシャンテというべきか。琴音が人間に戻って2人は末永く幸せに――とはなりません。琴音は「世界」という人外の存在のままです。ここはご都合主義でもよかったんだよ、許すよ……と思わず心の中で言ってしまいました。

 

だけど、ミシェルが人間。琴音が人外。

種族を超えた恋愛というテーマは、この「幻想喫茶アンシャンテ」というシリーズを通して不変でした。相手が何であろうと関係ない。徹底して一貫性のあるゲームでした。

大満足です。

 

ミシェルが人間として寿命を迎えた後のことを不安がる琴音に、「どんな姿になってもまたドアベルを鳴らす」。いつかの来店を希望に、という約束をします。一見すると残酷な誓いにも感じられますが、数百、数千、数万の時を生きて琴音に巡り合い、あがいて、奇跡を得たミシェルだからこそ信じられる言葉ですよね。本当にどんな姿になってでも、数万年かかろうとも会いに来てくれそう。そう思わせてくれる。

 

「ようこそ――【幻想喫茶アンシャンテ】へ!」

というタイトルコールで締められたのも最っ高の終わり方でした。攻略制限が生きる演出……!

 

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サブキャラのアスモデウスさんも、結局ふつうに良い人でしたね。完全にお笑い要因になってましたけど、それがいい感じに重い話を和ませてくれていたといいますか。

この世界線では、最後は狩也くんも同級生に人外であることをカミングアウトしていました。それができる世界になったんですよね。2人が経営していくアンシャンテも、これからお客さんが増えて良い意味で変わっていきそうです。

 

また、ハッピーエンドは上記のとおりですが、ノーマルエンド(※ゲームオーバーになる中途バッドエンドではないバッドエンドを、便宜上“ノーマルエンド”と表記しています)も感動しました。滅びゆく世界の中で2人一緒に消失していくENDです。ゆっくり沈んでいくような表現が物悲しくて印象に残るエンドでした。

 

あと、ミシェルは強制終了のゲームオーバーも本数が多かったですね。私が回収した限りでは3本。その中で、作中で一番好きなゲームオーバーがあります。それがこちら。

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琴音だけ元の世界に返して、ミシェルが終わりの世界に残るバッドエンドですね。

 

「後から必ず行くから」と琴音をゲートに無理やり押し込んで人間界へ帰すミシェル。それに対して、「……やっぱり君は、嘘つきだね」と言うノア。この時点で完全にもうミシェルが琴音の元へ帰れないのを悟っていることを確信するプレイヤー(´;ω;`)

 

それからノアは「君はこれ以上救われないでいてくれるの?僕を置いていかずこの世界に、隣にずっといてくれるの?僕を独りにしないでくれるの?」と狂気じみた言葉をミシェルに向け。ミシェルは「絶望の時をここで一緒に永遠に刻んでいく」とノアに約束します。

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そして、そう言ったミシェルを許すノア。再び2人で永遠に絶望の時を歩んでいくことになるのです……。

 

このバッドエンド、好きすぎる。やっぱりどうしてもゲームオーバーって中途半端な終わり方になりがちだと思うんですけど、この結末は本当にあり得る。

琴音のことを思って自分を犠牲にしたミシェルの気持ち、ミシェルを許したノアの気持ち、1人元の世界へ帰された琴音の気持ち、そして終わりの世界で生きる2人のその後――いろんなことを想像させられるバッドエンドでした。

 

実はこの中途バッドエンド、回収しづらい部分にあるんですよね。拾えてない方も多いんじゃないかあなと。気になる方は、よかったら当ブログのミシェル攻略記事で回収チャートを記載していますので、参考にどうぞ。

⇒幻奏喫茶アンシャンテ ミシェル 攻略

 

 

これにて楽しかった『幻奏喫茶アンシャンテ』も終わりです。

本当に、終わったあとに余韻を感じさせてくれる良作な一本でした。

この1か月ずっとアンシャンテのこと考えてましたもん(笑)次にいくまでに切り替えられるかな~。

 

 

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P.S.なんと、この記事をアップしようとしている本日11月11日は、偶然にもミシェルの誕生日でした……!公式ブログさんの方でミシェル誕生日記念SSが、描き降ろしイラストと共に掲載されています。ニヤニヤしながら感動させて頂きました。下記は公式Twitterの引用となりますので、まだご覧になっていない方はそちらから公式様へどうぞ。

 

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