総評レビュー&総合感想です。ネタバレなし。
購入しようかどうか迷っている人の1つの指針になれば幸いです(*’▽’)♪
※個人的所感ですので参考程度にお願いします
※気を付けていますが、1ミリのネタバレも許せない、まっさらな状態でプレイしたい!という方は回れ右推奨です。
総評レビュー(ネタバレなし)
シナリオ
1~4章が共通ルート、5章~9章が個別ルートという構成で、プレイ時間は共通10~12時間、個別5~7時間とボリュームたっぷりでした。私の場合は総プレイ時間が40時間超となったので、長く遊べるゲームです。
シナリオの出来については……全体的に残念だと思ってしまいました。がっつり酷評を書き連ねるのも心苦しいので、残念だった点については以下、箇条書きで失礼します。
- 地の文がなく心理描写が薄いため、行動が突発的に見えてしまう。急展開にプレイヤー置いてけぼり。
- 見せたいシーンの個々のブロックを、切り貼りして繋げたような構成。基本的にシーンぶつ切り状態のため前後の繋がりがあやふやでちぐはぐな印象を受ける。
- 前後の文脈を捉えていない文章が多くて混乱する。接続詞が上手くかかっておらず、少々日本語の乱れを感じた。
- 肝心の『ハイカラ流星組』の活動がふわっとしている。本来見せ場になるであろう、悪を“成敗”する部分はもやっとしていて爽快感は無かった。
- 終わり方もスッキリせず、肝心な所がぼやけてしまっている。
良かった点は、明治時代の生活風景についての描写は(キャラクターの行動はともかく)しっかりあったこと、がっつりある共通ルートで皆と関わって行動していくわちゃわちゃ感が明るくて楽しかったこと、クリアするごとに裏でそのキャラクターが何をしていたのかという小話が共通ルートに挿入されていくことが面白かったと思います。
キャラクター
攻略対象キャラクターは5人。主人公の働く米問屋の息子のお坊ちゃん学生、同じ長屋に住む住人その1の英語教師の先生、女の子なのに歌舞伎の舞台に立つ役者のお友達、洋服店を営むテーラーのお兄さん、同じ長屋に住む住人その2の寡黙な人力車の俥夫といった特徴のある面々が揃っています。
各キャラクターともビジュアルが良く魅力的。……なのですが、前項で述べたシナリオの苦い部分により何故その行動に至ったのか思考が分からず、意味不明な行動が目立ち感情移入が難しかったです。主人公も含めて急に情緒不安定になるから心配する。
過去にあった出来事などのバックグラウンドの設定自体は良かったので、もう少し掘り下げたり話に整合性をもたせてあれば皆好きになれたのになあという印象です(嫌いではないのですが……)。
主人公については開始まもなく抱いた印象としては、ちょっと頭弱い?でした。抜けてるというか、どんくさいというか。恐らくあの時代の16歳の女子という「普通」感を出そうとして意図してそういったキャラクターに仕上げたのだと思いますが。同時に、厳しい境遇でもそれを誰かのせいにせず明るく前向きに頑張る姿には好感を持ちました。周りはそんな姿に元気をもらってるのかなあとか。ただ、話が進むにつれ察しが悪すぎて浅慮な面が目立ったり仕事に対する姿勢に違和感を持ってしまったりと、少しイライラさせられるところもありました。
糖度
糖度は普通です。スチルがつくようなシーンは甘い雰囲気が出ていますが、描写がざっくりしているため絵に全てを預けている印象でした。恋愛展開は正直、雑です。
グラフィック
原画・キャラクターデザイン担当は清白(すずしろ)かりん先生です。同氏が担当した代表作が、乙女ゲームがSwitchに移行して初の新作となった「Cendrillon palikA」ですね。あれがちょうど2年前くらいの作品になりますので、元々綺麗でしたが画力が更にアップし、本作の魅力に大幅に貢献しています。
キャラクターデザインが素晴らしく、顔も良ければ服装も良い。スチル枚数も差分なしで15枚+後日談で1枚と多く用意されており、絵については文句なしの出来だと思います。
全員集合スチルも他の乙女ゲームに比べて惜しみなく多数出てくるので、見ていて飽きませんでした。
また、本作ですごかったのが、場面や季節による服装の差分です。メインキャラは普段着と部屋着と流星組の衣装、そして冬には普段着のコートと流星組用のコートも登場します。サブキャラクターも冬にはコートを羽織ります。コートも全員デザインが違います。
背景グラフィックも四季の移り変わりが反映されていて、桜や紅葉、雪が散ったりします。
オープニングムービーも見ていてわくわくするようなものでしたので、グラフィック面は全体的に満足です!
システム
スキップが高速で快適で、動作が軽かったです。タッチ操作も使用感が良かったです。
MAPで聞き込みをするというイチカラム作品の特徴である探索パートがあります。こちらは準備されているテキスト量が多く力が入っていました。が、「華ヤカ」のようにパラメーター上げではなく、MAPをスキップしても物語は進行するので無くても良かったんじゃないかなあと思ってしまいました。ここに細かく文章を載せるのではなく、シナリオに組み込んでも良かったのでは。この余力をそちらに回して欲しかった。
足音の演出は下駄の音まで細かく、冬にはキャラクターが喋るごとに白い息が出るなど演出が凝っていました。辞書も、明治時代特有の制度や品物について細かく記載されていたので、豆知識的な感じで読むのが面白かったです。
総評
総括すると、良かった点は設定と題材そのもの、そして何といっても清白先生の描くイラスト。目で楽しめました。
悪かった点はシナリオ。この一点につきます。勧善懲悪、必殺仕事人などの爽快ヒーローものを期待していると肩透かしを喰らいます。肝心な所がぼやけているため、消化不良と中途半端な感じで終わってしまいました。
キャラクターのバックグランドや、驚かされた秘密、判明する謎など、設定自体は面白いものでした。なぜキャラクターや謎についてもっと掘り下げなかったのか。もっと詳しく話を聞きたかった所がたくさんあります。
それだけ気にさせてくれる魅力を持っていました。構成を見直して各シーンに繋がりと整合性をもたせ、心理描写も細かく描けばきっと化けていた作品だったと思うだけに勿体ないです。
よって、本作はシナリオに重きを置く人にはおすすめできません。
逆におすすめできる人については、高木氏の作品を全てプレイしているファンの人や、キャラクターデザインなど絵柄面を最重要視する人、バッドエンドや残酷描写がないのでそういうのが苦手な人、でしょうか。
あとは、榎木淳弥さん、伊東健人さん、井口祐一さん、小林親弘さんといった、普段コンシューマー乙女ゲームのメインキャラクターを担当されることのなかった声優さんが出てくるので、ファンの方は必見だと思います。おなじみの石川界人さんも安定のお兄さんっぷりを発揮されていました。
以上で総評を終わります。
今回、せっかくの作品に対し酷評となってしまい申し訳ありませんでした。あくまでも一個人としての主観的な評価として捉えていただけますと幸いです。
Amazonレビューも多数投稿されていますが、長文レビューにはネタバレが多く含まれていたため購入を検討されている方は閲覧の際注意した方がよろしいかと思います。
また、評価の高いコメントも複数ありましたので、良い意見も参考にしながらぜひ検討して頂ければと思います。
好き嫌いは人それぞれ。良い乙女ゲームライフを!
Switch 2020/9/24 発売
オトメイト(アイデアファクトリー)/イチカラム
清白かりん 高木亜由美
榎木淳弥 伊東健人 井口祐一 石川界人 小林親弘
明治世直し恋愛AVG

