総評レビュー&総合感想です。ネタバレなし。
購入しようかどうか迷っている人の1つの指針になれば幸いです(*’▽’)♪
※個人的所感ですので参考程度にお願いします
※気を付けていますが、1ミリのネタバレも許せない、まっさらな状態でプレイしたい!という方は回れ右推奨です。
総評レビュー(ネタバレなし)
シナリオ
死神に魅入られた国・アルペシェールでは、国民全員が等しく23歳までに死に至る《死の呪い》をその身に抱いて生まれてきます。それを回避するただ一つの方法は、新しい身体に記憶だけを引き継いだ“リライバー”として再び23歳までの年月を繰り返すことだけ。ただし、それには大きな代償を支払う必要があります。
そんな世界で、関わる者を不幸にしてしまう《死神》と呼ばれる少女が、《死の番人》と名乗る謎の男と邂逅し、その導きにより国に巣食う《様々な死の呪い》に近づいていく――
――というお話です。この設定が面白く、物語に深みを与えています。国民は23歳までに死を選ぶか、“リライバー”になるかを選択しなければなりません。後者を選択すれば「代償」を支払わなければならず、命を選べばその「代償」を喪うことになり、そこに葛藤が生まれます。
本作品のジャンルは「ダークファンタジー」となっており、【絶望】と【救済】が大きなテーマになっています。
各キャラクターのエンディングには「絶望エンド」と「救済エンド」が用意されています。
よって、物語全体としては暗めなお話になっています。バッドエンドが苦手な方にはおすすめできませんが、逆に重めの話が好きな方には刺さる作品だと思います。
もちろん、全てが暗い訳ではなく、暗い面があるからこそ小さな幸せが感じられる日常パートや、キャラクター同士のやり取りや掛け合いが楽しい賑やかな共通ルートも見どころです。
また、シナリオ重視派の方々にもおすすめの作品といえます。
個別ルートは各キャラクターそれぞれ独立した物語となっており、彼らが抱える謎と、国の《死の呪い》の真実に少しずつ近づいていくことができます。随所に伏線が散りばめれており、真実が明かされたときに「あれも伏線だったのか!」と驚かされることもしばしば。深みのあるシナリオが楽しめます。
ボリュームは共通ルート1~5章、個別ルート1~4章(キャラクターによって5・6章まであり)という章構成で、プレイ時間としては初回は共通ルート含め9~13時間、2周目以降は6~9時間、総プレイ時間は個人差があるかと思いますが、40~60時間程度になるかと思います。
参考までに、【ボイスをスキップせず全て再生+好きなシーンは何度か見返す】というゆっくりめなプレイスタイルである筆者の、コンプまでの実際のプレイ時間は65時間でした。(2周目も楽しめる作品なので、その後周回して80時間以上になりましたが)
ということで、シナリオのボリュームも充分にある作品です。
キャラクター
攻略対象キャラクターは、公式サイトでプレイ&キャラクタームービーが公開されている6名です。皆、それぞれの信念を持ち、《死》に向き合っていきます。
そんな個性豊かな彼らが集う、共通ルートの一角での賑やかなやり取りは、物語に数少ない明るさを与えてくれています。
彼らのそれぞれが抱える「秘密」も、物語の大きなキーポイントになっています。キャラクター全員に無駄がなく、その「秘密」は対象の物語だけでなく、集めれば物語全体の秘密を解き明かしていく鍵にもなっています。
恐らく、プレイし終えた後にはキャラクターを見る視点が初見からは変わっているはずです。プレイ順によっても作中の彼らを見る目が変わってくると思うので、そこも本作の面白い所です。
糖度
糖度は低めです。物語の雰囲気にマッチしたバランスだったと思います。甘いシーンがほとんど無い分、キャラクター達の魅力は物語中での彼らの言動や行動の中で十分に示されていました。
2人の距離が縮まる過程が描かれた数少ないシーンでは、お話全体が暗めな分、小さな幸せをとても大きく感じさせてくれました。同時に、暗いシーンに直面した際にはその些細な幸せが、切なさも呼び込んできます。
ちなみにCEROはコンシューマー乙女ゲームでは最大の「D(17才以上対象)」指定ですが、これは一重に流血表現によるものですね。
甘いだけが恋愛じゃない、命をかけて挑む恋の物語が楽しめるようになっています。
グラフィック
スチル枚数は各キャラクター、差分なしカウントで13枚ずつあります(差分ありで数えると各キャラ15~18枚)。枚数としては他の乙女ゲームと比べても標準的で十分なのですが、絵が綺麗すぎる余り「もっと見たい!」という欲望が湧き上がって物足りなく感じてしまいました……笑
イラストレーターは読(よみ)先生です。乙女ゲームでの代表作は「剣が君」で、かの作品の発売からは8年が経過していますので、元々画力のある先生でしたが年月を経て更にパワーアップされています。本作品は『オトメイト×読氏のコラボレーション』ということで売り出されていますので、イラスト目当てのパッケージ買いでも損はないかと思われます。
「美麗」という表現が相応しいイラストの数々でした。
立ち絵と表情差分、衣装差分も用意されており、シナリオの表現と相違ないように細かく切り替わるようになっています。
背景も多く、シーン描写との違和感も無いようになっていました。
システム
標準的なオトメイト仕様です。選択肢スキップも搭載。
選択肢スキップは便利ですがローディングが長く、次の選択肢まで間が空きすぎているとかなり時間がかります(裏で頑張ってスキップしてくれている感じ)。既読スキップもやや遅めに感じます。おそらく演出やキャラクターの動きが細かいせいでしょうが、周回中は少しストレスに。
愛キャッチシステムももちろん搭載(ON/OFF可能)。好感度が上がる選択肢を選ぶと画面にリコリスが咲き、絶望に向かう選択肢を選んでしまうとノイズが走ります。好感度画面ではリコリスの花に光が燈っていくようになっています。
あとは音楽が素敵でした。暗くて深い曲、怖くて刺激的な曲、切なさを感じる曲と、シーンに合わせた全25曲あるサウンドトラックが物語に情と深みを与えてくれています。個人的にはタイトル画面で流れるテーマBGMが好きで、神聖さを感じさせる壮大なオーケストラから、切なさを感じさせる静かなピアノに移り替わっていく表現がグッときます。
総評
個人的には2021年の新作の中では完成度が一番高かった作品だと思っています。(※あくまでも個人的な所感になります)
しかし、本作のジャンルは「ダークファンタジー」であるため、当然、合う人と合わない人がいるかと思います。
彼らの迎える結末は、必ずしも万事解決のハッピーエンドとは限りません。ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、【絶望エンド】と【救済エンド】が待ち構えています。
よって、バッドエンドや重暗い話が苦手、ハピエン至上主義の方にはおすすめできません。
逆にバッドエンドやメリバ展開が好きな方、シナリオ・グラフィック・キャラクター重視派の方におすすめできる作品です。
なお、プレイ前のネタバレにはくれぐれもご注意ください。ネタバレをくらってしまうと一気に面白さがなくなります。《死の呪い》という大きな謎に向かって、物語のキャラクター達と一緒に、徐々に小さな真実を拾い集めながら、少しずつ真実に近づいてもらえればなと思います。
公式サイトの情報は隅々まで確認しても問題ありませんので、迷っている方は公式サイトで雰囲気を掴んでみてはいかがでしょうか。
【絶望】というテーマに重きを置いた本作品は、乙女ゲーム界への新たな挑戦だったとも思えます。プレイ後、何とも言えない感情が胸の内に生まれる、心に残った1本でした。
絶望か、救済か――。絶望の果てに辿り着く結末を、ぜひご自身の目で見届けてみては。
Switch 2021/10/7 発売
オトメイト(アイデアファクトリー)
読 中山智美 夕月 浅海藍子 吉田ミサ 立松文悦
斉藤壮馬 平川大輔 天﨑滉平 細谷佳正 八代拓 興津和幸
――これは永遠の終焉へ向かう物語。
オトメイト×イラストレーター・読が贈るダークファンタジー、開幕。
P.S.刺さった筆者は見事にロス状態に。しかし刺さる人には刺さるけど、苦手な人は苦手な作品なので、表立って万人におすすめ!と言えないのが少々寂しいところですね……。