終遠のヴィルシュ -ErroR:salvation-
- 人を求める運命と共鳴する男 -
- 死を司る運命を翻弄する男 -
第三幕のネタバレあり感想です。
攻略はこちら:終遠のヴィルシュ 第三幕 攻略
第三幕(アドルフ/アンクゥ) 感想
- ネタバレ有り感想です。コンプ前の閲覧はお控えください。
- 他キャラクターのネタバレも若干含みます。
- 各種特典小冊子の後日談SSのネタバレもあり。
全体(第三幕共通)
いよいよ、4つの絶望を息も絶え絶えに乗り越えた先に解放された第三幕です。
ここまで来ると「救いを……救いをください……」と天に向かって手を伸ばすゾンビ教徒みたいな状態になってました。
いやあ、奥が深かった。
やっといろんな謎が解き明かされましたね。
第一幕のプロローグでは、突然セレスが自死するシーンから始まって、そのあと誰かがそこに駆け付けた描写があって、てっきりそれはアンクゥだと思っていました。
しかも確実にセレスは喉を突きさして息絶えたように見えて、そのあと第二幕に移って普通の日常が始まったので、死の番人であるアンクゥが時間でも巻き戻したのかな……?なんて初プレイ時にはぼんやりと思っていました。
その予想を違えてセレスの自死の現場に駆け付けていたのは実はアドルフで。
しかも何やら【18年】というワードが。
察しの悪い私はこの時点ではまだ頭上に疑問符だらけです。
この時点でいろいろ察することができた方っているんでしょうかね……?
そして第三幕で明かされた二人の真実。
アドルフは第二の漂流者で、アンクゥはセレスを失った未来から来たアドルフであるということ。
どちらも当初からは予想もつかなかった事実です。
第二の漂流者?そしてまさかの同一人物???え?え!?!?
いやあ、予想ができない乙女ゲームって本当に素敵ですね。良きかな良きかな。
本当にこのゲームはどのルートも2周目が捗ります。初見とプレイ後で視点が変わる。
共通ルートで死刑執行人捕縛のため皆でアドルフ宅泊まり込みのときに、本棚に漂流者の本があったから、攻略対象の誰かが末裔という伏線かな?とは思ってて、それがアドルフだと考えてたんですよね初めは。
でも後にイヴが末裔だということが判明したので、アドルフが漂流者関係という線を消してしまってました。身体が丈夫というのはきっとまた何かの遺伝子がどーたらとかで呪いが効かないんだろうなあみたいに考えていて。
それがアドルフ自身が直接的に別の国から来た漂流者だったなんて。
同一人物に関しては全くの予想外。第三幕になり謎が明かされるようにフラグが立っていって徐々にもしてかして、とはなってきますが、このゲームを始めた当初からは想像もつかなかった真実に驚きしかなかった。
ビジュアルも声帯も違うし、初見は絶対に別々のキャラクターだとしか思わないじゃないですか……!第三幕に入ってからも「どこから個別ルートに分岐するのかなあ」と呑気にわくわくしてましたし。
私が確信したのは、首だけになった捕らわれのアンクゥを救出した際に、アンクゥの口調が荒っぽくアドルフのものになった瞬間でした。
振り返れば「身長がほぼ同じ二人に挟まれ~…」という描写や、シチューを食べて軽く震えたのも伏線。仲良く喧嘩する似た者同士どころか通り越して同一人物だっという。
イヴルートで彼を助けた時に「久々に剣を使った」というのも軽い伏線だったんですね。
話が進むにつれておそらく、あえて二人のアップを並べてきたりする演出も好きでした。
この辺は「あれ、顔似てない?」って思いますよね。
それでは、これらの真実を踏まえて第三幕を感想とともに振り返っていきます。
貴重な日常パートでの距離を詰めるアドルフとセレスにほっこり。幼なじみ特有の距離感。スチル付きの添い寝や遠乗りのシーンは素敵でしたね(*’▽’)
アドルフとアンクゥの喧嘩もにぎやかで。
最初はなんであんなにアンクゥはアドルフに対して冷たいんだろう?と謎でしたが、真実を知って納得。
大嫌いな役立たずの自分だったから、遠慮する必要はなかったんですね。
そして、アンクゥがアドルフに対して告げる辛辣な言葉って、全部過去の自分に向けたものなんですよね。アドルフの延長線上にアンクゥがいるので。
「7年もの間、守るだけで何もしなかったからセレスは死んだ、騎士きどりの役立たず」とか。今思うと自戒の言葉のように思えます。同時に、今のアドルフへの忠告ともとれる。
最初はアンクゥがセレスに対してめちゃくちゃ優しいのも意外だなとか思っていました。初めて公式サイトで立ち絵を見た時には「怪しい枠」の人としか見ていなかったので、もっと正確がひん曲がっていたりするのかと。実際はセレスに対するその優しさは当然のものだったのですが。
おやすみと言ったセレスに嬉しそうにおやすみと返す何気ない日常の一コマも、アンクゥからすれば数百年ぶりの日常の挨拶なのでした。
アドルフが泳げないということも話に登場しましたが、そういえば過去に師匠に海に投げ飛ばされていませんでした……?
アドルフにとって水は辛い記憶のはずなので、それで海に放り投げられたりしたら、そりゃあ師匠のことをあそこまで怖がりますよね(笑)
水が苦手なことの他にも、病院を避けていたことも自分の存在に気づかれないためという理由がありました。共通ルートでイヴと二人でカプシーヌの病院に運ばれたときに逃げ出そうとしてたのはただの病院嫌いではなかったんですね。いや、病院嫌いっていうか普通に「怖い」というのもあるかと思いますが。
誰にも心を開けなかったのも、自分がこの国で唯一の普通の人間だったから。
リライバーになればもしかしたらその秘密を誤魔化せるかもしれなかったのにそうしなかったのは、必要ないとか以前に「意味不明な技術が怖いから」。
死を当然のものとして享受しない、実に普通の人間らしい思考です。
アドルフ達がセレスを好きになった理由も語られました。
彼の本当の年齢は公言している21歳ではなく、実は25歳で。自分が23歳で死ぬことだけを希望に生きてきたのに、23歳になった瞬間に自分に呪いが効かず死ねなかったことに絶望してしまいます。
流れ着いた人の命を軽く扱うおぞましい国で生き永らえたくはなくて、けれど幼いころのようにひとり孤独で死にたくはなかった。
居場所を作って温かい場所で誰かに看取られながら死にたい、それがアドルフの夢だったんですね。
このまま生きても実験体にされる未来しかなく、それを避けるなら一人孤独に人目を逃れながら生きていくしかなくて。それならいっそのこと今この場で死んでしまおうと、自死を試みます。
ここで自分の命に終止符を打つために使おうとしたのが、セレスがくれた短剣でした。
セレスが自死しようとした時には、彼女に向かって「この短剣はそういうことに使うんじゃない」って怒っていたけれど、過去自分も同じことに使おうとしていたなんて。
こういうところも話の繋がりが見えて、無駄がないですよね。
そして、アドルフを守るためにプレゼントした短剣が彼を死に導く寸前に、いち早く誕生日を祝おうと施設を抜け出してきたセレスの来訪がそれを止めてしまい、ついに八つ当たりのように今まで妹として守ってきた彼女のことを「死神」と罵ってしまいます。
それを全て受け止め、受け入れたセレスに救われ、そして心を奪われました。
先が見えないのに、自分の命だけは誰よりも永く続くことだけが確定しているアドルフの人生に、この瞬間、新たな生きる意味が生まれたんじゃないかなと。
徐々にセレスもアドルフに向ける感情が別の何かに変わっていくことを自覚していきます。
アドルフに恋愛感情を向け始めるセレスを見守るアンクゥって、すごく複雑だったんじゃないかな……。
自分であって自分じゃない。自分のおかげでセレスは死ななかったのに、彼女が愛情を向けるのは、自分の介入なく時が進んでいればそのまま彼女を自死させていたであろう、昔の役立たずの自分なんだから。
でもセレスがアドルフを特別だと思ってくれるのは、今はアンクゥである自分も過去アドルフであった時に、確かに彼女と積み重ねていた絆が地盤にあるんですよね。しかしセレスは今の自分ではなくて過去の自分を見ている。
アンクゥ視点って寂しいし切ない……。
と、自分の想像でしかありませんが、こんなことを考えながらプレイしていて胸が軋みました。
セレスがアドルフのことをアンクゥに相談した時、「他に相応しい男がいる」と告げるアンクゥに「自分とかですか?」とセレスが返すも、「自分はその資格をとうに喪っている」と哀しそうに返すのもまた……。
セレスを死なせてしまった役立たずの「自分」が、今のアンクゥであろうと過去のアドルフであろうと大嫌いで、許せないのでしょうね。
自分自身の幸せというのを1ミリも考えていないアンクゥなのでした。
話は進みVSリアム。
やっぱりダハトか~~~。って感じでしたねさすがにここは!鈍くても気付けました。
他ルートでも少しずつ伏線がありました。
マムは子供を失くしていて、クリスティーヌ女王も子供を失くしている。ダハトも母を失くしてその復活を目的に生きている。
マムが王族なんだろうなあというのは、どこかでシアンがマムに対して「お前も昔は周りにしてもらって当然だと思ってただろう」的なことを言ってたので(うろ覚え)、早い段階で予想がつきました。
最初にシアンとサロメの髪の色が似てるなあと思っていた時に、これもどこかで『母はシアンの薄い髪色と似ている』とか『同じ紫色の目』とかいう描写がどこかにあった(うろ覚え)。
まあこの見た目については、マムは「姿の異なるリライバー」であることが判明しており、ダハトがすぐに気づけないくらい女王時代と見た目が変わっているので、どこまで髪色や目が当てはまるのか定かではなくなりましたが。
ちなみに、マムがダハトのことを見つけられなかったのも、姿の異なるリライバー化の副作用で記憶の一部が抜け落ちてしまっていたからでした。
あとは第三幕では「支援者」の声の核にあるのがもろダハトでしたね。機械で変調してるけどなんか聞いたことあるな~……土岐さんじゃないですか!ってなりました(笑)
それでも、セレス・アドルフ・アンクゥの3人が王族&カプシーヌに捕まった時に牢屋でダハトに出会って手助けをしてくれた上に、遺髪まで残して死んでしまったダハトを見て「ここまでの伏線わかりやすいしあからさまな気もする……ミスリードだったのかな」とか思ってダハトの死を信じかけている私がいました(笑)疑心暗鬼にさせられた。
「ダハト」はどのルートでも友好的だし、味方になってくれたこともあったので疑いきるのが難しかったです。
ダハトの正体がリアムと分かってからの、ダハトとリアムの口調の使い分けがすごかった……!無邪気と冷静。底が知れない感じ。
立ち絵で前髪が避けられて瞳がはっきりと見えるようになるのも細かい演出で良いですね。
マムについては、セレスとアドルフに向ける愛情が本物だったことには心底ホッとしました。
そんなマムに実験材料を見るような目で見られ「あなたにだけはそんな目を向けられたくなかった」と哀しそうに言うアンクゥに涙( ;∀;)
これ割と序盤の場面で、アンクゥ=アドルフということがまだ予想もできていない段階だったので、後から思い返して心が打たれたシーンでした。
最終的にはマムに気づいてもらえて本当に良かった。
セレスについても、国を救うリコリスの遺伝子を持つだけでなく、そのアレロパシー効果によって生まれた場所でかつて死に絶えた女王クリスティーヌの遺伝子までをも吸収し、リアムにとっても救済の鍵となる存在だったことには驚きでした。
もうイヴルートでセレスの秘密に関しては材料出尽くしたとばかり思っていましたよ。負の設定てんこもり。
アドルフの一世一代の告白シーンも素敵でした♪
声高々と告げつつも、異性の認識まで5年という、そういうところは自信がないんだなあと、どこまでもアドルフらしい告白でした。
そして遂にVSリアム戦が終わり、瀕死状態になるセレス。
リアム戦については二転三転ありちょっと長いなと感じてしまいました、、、もうちょっとこの後のシーンやエピローグを丁寧に書いてくれると良かったなあなんて。最後ちょっと駆け足気味だったような気がします。
最終局面にきて遂に語られる、アンクゥの真実。アンクゥにとって過去であり、セレスとアドルフにとっては未来のお話。
ここまでの話の流れでアンクゥとアドルフが同一人物だということはほぼ確信しながらも、一体何がどうなってそうなってしまったのかは一切分からなかったんですよね。いよいよクライマックスかとどきどきしながら進めると、そこには壮絶な体験が綴られていました。
かつてアドルフであったアンクゥはセレスの自死現場に「事後」に駆け付け、その死に絶望している間に年齢を取り繕うことも忘れて漂流者であることが露見し、その後シアンに捕まり実験体に。その結果、細胞が異常分裂を起こすようになり、条件を満たさない限りは死ねない不老不死の化け物に成り果てました。
それから103年。未だ実験材料として捕まっているアドルフを、リライバーになったイヴが救出します。
そしてタイムトラベル技術で過去に飛び、数百年かけてリコリスを繁殖させ、国民の寿命を5年引き延ばした。ここで第三幕冒頭の【18年】というワードの謎が解けます。かつて、アルペシェール国民の命は18歳までだったのです。
それでもまだ土壌の毒素は消滅せず、困り果てたところでイヴの先祖である漂流者と出会い、リコリスを自分が体内に取り込んで抗体を作るという活路を見出します。
これが「花を食む」の真相でした。アンクゥの血にセレスの力を抑止する効果があったこと、血から花の香りがするのもこのため。
そしてリコリスを取り込んでいる間は動けなくなるから、その代わりにリコリスを繁殖させ守る、ノワージュとの盟約が生まれました。
セレスの前にもっと早い段階で現れることができなかったのも、リコリスを食して苦しみもがいていたせいで動けなかったから。彼女がリコリスの花園に生まれ落ちた日も、視界に入れるだけで精一杯だった。そしてやっと動けるようになったのが、セレスの自死を止めたあの晩なのでした。
この後、他ルートの救済エンドを回収していくと分かりますが、アンクゥは裏でずっとこの「準備」を一人でしていたんですよね。
セレスを失った未来から来たアドルフ。それが、アンクゥの正体でした。
実際にアンクゥが生きた年月は、なんと628年。
(肉体年齢25歳・生存年数628年/限定版特典小冊子のプロフィールより)
その苦しみは計り知れません。
セレスを喪い実験体として未来で100余年を生き、飛んだ過去で500年ものあいだ孤独と抗体作りの副作用に蝕まれながら生きてきた。それが、アンクゥの人生だったのです。
その永い永い人生においての彼の平穏って、どれほどあったんでしょうか……。
アンクゥが最初から真実を話せない、「世界からの干渉」も、同じ世界に自分が二人いる影響で、今のアドルフが知らないことは話すことができない、というのが本当の制約でした。
これ、共通ルートの初出の時点で明らかに世界というよりは「誰か」に対して苛立っていた様子だったので、最初はその誰かって上位の神様とかかなあ、とか思ってました。創造主とかそういうレベルの。初見だとアンクゥの神秘的な雰囲気にすっかり騙されて死神とか冥界とか信じちゃってました。
「役立たずの癖に邪魔するな」とか「邪魔ものさえいなくなってくれたら~」というアンクゥの”誰か”に向けた言葉は、アドルフに対してのものだったのですね。
この制約については今のアドルフがいなくなれば解けるものだと思うのですが、アンクゥはアドルフのことを殺したりはしなかったんですよね。
一番てっとり早く事を進めるならアドルフを殺して制約解除、真実を話す、が最短ルートになりますよね。
心底嫌いな自分を殺すことに恐らく抵抗は無さそうなので、やっぱりセレスのためだったのかなあ。
短剣も重要なキーアイテムでしたね。よくよく考えると、アンクゥはセレスが自死に使った短剣をずっと肌身離さず持っていたんですよね。セレスがくれた大切な思い出の品ではあるけれど、セレスの命を奪ったのもその短剣で。
他ルートのとあるエンディングでその短剣を貸していたことを思い出すと更に胸が苦しい。
真実が語られた後は、アンクゥの口調がすっかり荒っぽいアドルフのものになっていたのも感慨深い。
話は少し遡りますが、アンクゥが神秘的に姿を消す裏側の事実には思わずにっこり。
物陰に隠れるアンクゥ、可愛い!!!!!
恥ずかしかったんだ死の番人。死の番人でも何でもない人間なのにいい歳して恥ずかしいよね確かに。そもそも元がアドルフだったならそりゃ恥ずかしいよね死の番人……。
正体を隠すために作った設定とはいえ、信じ込ませるために演出まで手を抜かないアンクゥのプロ根性、流石。
そういえば特典の各ドラマCDや冊子では商人、リコリスの精霊、小説家、伝説の釣り人など様々な職業人を称してたなあ……。
アンクゥって真実を知っているからこそ、セレスのことを一度も「死神じゃない」と言ったりはしなかったんですよね。
死の番人として現れて、むしろ彼女の死神の力を肯定していた。そこが他のキャラクター達にはない部分でした。
そして彼らを語る上で欠かせないのはイヴとの絆。
アンクゥが第三幕で初めにイヴを見かけたときには思わず手を伸ばし掛けるも、「そんな資格はない」と会うことはせず。
親友との数百年ぶりの再会、なんですよね、、、
そのあともう一度邂逅してちゃんと会話するシーンがあって良かったです。(すぐにリュカに切り刻まれてアンクゥは実験体行きになっちゃいましたが……)
あのシーンのイヴが可愛かったです(*’▽’)
テンション上がりすぎて素手でリコリスを摘もうとして死に向かうイヴと、それを慌てて止めるアンクゥ。
いつもの感じの「イヴとアドルフ」のやり取りだな~と。
アンクゥ視点だと、イヴは100年経っても自分を探し続け救出してくれた恩人です。
その上、鍵となるリコリスの球根をアドルフに託して、未来へと自らの命と引き換えに送り出してくれた(そこでもイヴと刺し違えたのはシアンで、二人の運命は予言関係なく絡み合うんだなあとか)。
イヴがいるからアンクゥがいて、アンクゥがいるからセレスが今もここに存在している。繋がってますねえ。
漂流者と盟約を交わしたけど、そのきっかけとなったリコリスをくれたのは他でもないイヴで。
アンクゥはよく「友」や「魂の友」という呼び方で漂流者やその一族のことを語っていましたが、その言葉が指す一番大きな存在の「友」は、ずっとイヴのことだったんじゃないかなと思います。
そんなイヴの人生を大きく変えた火傷のことを、アンクゥは知っていて助けなかったことに負い目を感じているようでした。助けなかったのは、イヴとセレスの縁を繋ぐためだったのでしょうか。
イヴルートでは、イヴを選んだ選択に憂いはないと断言していました。
イヴを選んで欲しいと願っていて。彼が望んでいた結末がイヴルートだったのかな。
役立たずの普通の人間である自分ではなくて、セレスを幸せにしてくれる運命が彼だと信じて。
アンクゥはイヴのことをセレスの「運命」だと言いますが、リコリスの守護者という役を用意したのはアンクゥなんですよね。
そもそも盟約ができる過去の時点から、火傷の原因であるセレスと出会っても憎んだり、決して死神と蔑んだりしないところを見て最初に「運命」だと感じたようですが、今のイヴとセレスの間にある、リコリスの守護者という大きな運命の一つをアンクゥ自身が造っています。
今のアドルフも、心の奥底ではイヴに嫉妬していました。それと同時に、彼もイヴがセレスの運命だと確信して安堵もしていました。イヴなら必ずセレスの身も心も守ってくれるから。
そしてアドルフとアンクゥ、二人から英雄視されその妄信にドン引きするイヴ。
と言いつつも、救済エンドのエピローグでは確かにちょっと運命を感じていたイヴなのでした。
それでは各エンディングについてを。
絶望エンド(アドルフ)
【 永遠に続く旅路 】
これはいわゆる無限ループエンドでは?
セレスを救おうと国を出て医者を回るも救えず、最終的には死にたいと願う彼女の命に終止符を自らの手で打つことになるアドルフ。
そして、アンクゥが提示する「希望」のために、「絶望」を繰り返すことを決意します。
これから100年を実験体として生き、化け物になった末に過去に飛び、500年を孤独の中で痛みに耐え続けることを。
アンクゥを殺してアドルフはその絶望の旅路に出て、再びセレスと巡り合うのでした――。
絶望エンドにしては希望がありそうな終わり方でした。内容えぐいけど。
でも知ってるんだよ。このあと後日談SSで救いがないところを見せつけられるんでしょう?絶望させられるんでしょう?
終遠エンド(アンクゥ)
【 終遠の口づけ 】
アドルフを殺すアンクゥ。全ての運命に絶望した男。
約束のリコリスを燃やし尽くして国を毒素で満たし、死の番人が死神となり、全てを死に誘っていきます。
「どいつもこいつも羨ましい」と、自分以外の4人ならば与えられていたものを並べていき、自分は何も与えられないと嘆くアンクゥ。
ラストは業火の中で穏やかにアンクゥとしての愛を捧げ、永遠の死を誓い合って二人は終遠を迎えます。
600年以上に渡る、アンクゥの絶望と痛みと孤独だらけの旅路の終遠。
辿り着いた最後が孤独な死ではなかったことだけが救いです。
2回目のキスというのも哀しい。
1度目は死んだ彼女に、2度目はこれから間もなく死ぬ彼女に。
先にアドルフの救済エンドを回収したので、アンクゥ側のエンディングはどんなだろうかとわくわくしていましたが、これどちらかというと絶望エンド寄りの結末ですよね……。
救済エンドはアドルフだけでなく、アンクゥにとっての救済でもあったんだなと思った瞬間でした。
そしてアンクゥの公式キャッチコピーって【死を司る運命を翻弄する男】なんですよね。
翻弄してほしかったよ。死を司って自分の好きなように運命を弄んでほしかった。
終遠エンドを迎えて思ったことは、翻弄「する」ではなく翻弄「したかった」なんだろうなあと。
改めて各キャラクターのキャッチコピーを見直してみると……
- イヴ :人を愛する運命を享受する男
- リュカ :人を導く運命を切望する男
- マティス:人を赦す運命を拒絶した男
- シアン :人を生かす運命に熱狂した男
- アドルフ:人を求める運命と共鳴する男
- アンクゥ:死を司る運命を翻弄する男
第三幕まで終えた皆さんなら、これらを見て何か思うところがあるんじゃないでしょうか。
上手く言葉にできないんですが、なんかこう……ね。
イヴはその運命を享受するしかなかったし、リュカの「導き」は最初思ってた方向性と全然違ってたし、マティスの運命はそもそも造られたものだったし、アンクゥは先ほど述べた通りきっと翻弄「したかった」だし……制作陣ずるい。でもそこが好き。
シアンとアドルフについてはそれぞれのルートを終えれば意味が分かるようになっていますね。この2人は確かにその通り。
救済エンド(アドルフ)
【 自死を願う死神の終焉 】
第三幕はエンディングに制限ありませんでしたね!!!!!
やっっっと辿り着けた救済……。5ルート目にして初めて救われるって本当にすごいよこのゲーム。
乙女ゲームの新たな歴史の1ページを彩る作品になりそうだなあと改めて感じました。
でもどうせなら、ここまできたら先に絶望エンドを見ればよかったなあとちょっと後悔。(制限あると思って救済エンドを真っ先にみた奴)
アドルフとアンクゥ、文字通りの「自分との戦い」。
その戦いを経て物語は終焉を迎えます。
アンクゥが死んでしまったのが残念でした……(´;ω;`)が、そうでないとどちらもアドルフである以上、収拾がつかないのも事実。
アンクゥは「お守り」の銃弾をアドルフと、そして自身に撃ち込んで死に向かいます。
リコリス・ノワージュの求婚。死神の御伽噺。親友が守り続けた花。
このシーンは話もスチルも美しすぎます……( ;∀;)
少し前にあったこの表現も素敵。
ひとりの男のために咲き誇っていたリコリスの花。ノワージュ家が伝えた死神の物語の、愛する人のためにリコリスを託したというのは本当のお話で。
【俺】と【私】とお互いを呼び合う二人も素敵。
アンクゥの告白。「愛してた」が切ない。
そして迎えた大団円!!!!!!!!
アンクゥ以外のメインキャラがみんな生きてる……。ダハトという大きい敵がいたおかげで、メインキャラが対立せずに共闘した唯一のルートでもありましたね。
ラストの白いリコリスの花に囲まれた二人のスチルも素敵でした。
黒いリコリスとの対比でもありますよね。新しい時代の幕開けです。
そしてクリア後にタイトル画面が変わる演出、ちゃんと二人分あったのも粋でしたね……!
絶望エンド 後日談(アドルフ)
※限定版特典小冊子SSネタバレです※
【 アドルフ絶望エンド 後日談SS 】
やっぱり無限ループだった。
何度も何度も彼女を救えずに死なせては時を遡り、繰り返す。
そこでアンクゥになったアドルフは、短剣が毎回全く同じものではないことから、全てのセレスとの出会いは別の世界線にあったことに気がついてしまいます。
世界が直線で繋がらず並行していることに気づいてしまった。自分がしているのは単なるやり直しや上書きではなく、別の時間軸への逃亡だったということに。
絶望するセレスを何人も何人も作り出してしまった事実に狂ってしまい、今度は目の前で生きていた今のアドルフに次のアンクゥ役を託し、自死します。
最後には今のアドルフに向けて、前のアンクゥとは違って「希望」ではなく「正しき終焉」を願って物語は幕を閉じました。
やはり救いなどなかった/(^o^)\
エンディングではセレスと再会できてたからワンチャンの可能性もあるはずだったのにね……。
「アンクゥ」が存在する限り彼らの物語はこの先も永遠に続いていくのでしょう。果たして、『正しき終焉』を迎えることはできるのでしょうか。
終遠エンド 後日談(アンクゥ)
※限定版特典小冊子SSネタバレです※
【 本当は、君ともっと―― 】
エンディングの直後、二人がリコリスの花畑で焼け死ぬまでの瞬間を描いたお話でした。
気を失ったセレスに穏やかに語りかけながら、燃えていく彼女を看取っていくアンクゥ。
想いを吐露するうちに、後悔とともに湧き上がる未練が絶望を上回り、最後の瞬間は起きることのない奇跡に縋ろうとしながら散っていきました。
アンクゥはどこまでも、希望と絶望を繰り返す人なのでした。
何度絶望しても希望を持ち、その希望のために絶望を繰り返す、そんな人。
救済エンド 後日談(アドルフ)
※ステラ特典小冊子SSネタバレです※
【 今度は女として 】
ザ・幸せなお話。この一言につきます。
幼馴染同士の少女漫画みたいなことしてました( *´艸`)
同棲を始めることになって、アドルフはアンクゥの墓でいろんな想いを吐露。そしてそれをアンクゥに導かれるようにそこに来たセレス聞かれてしまい――というお話でした。
“いろんな想い”というのは、セレスが綺麗になったとか、同棲したら我慢できる気がしないとか、そういった類のことです。
思わずニヤニヤしちゃったお話でした。
救済エンド 後日談(アンクゥ)
※ステラ特典小冊子SSネタバレです※
【 君だけの死の番人 】
アンクゥのSSは本編の幕間のお話でした。アンクゥしか知らない記憶の物語。
(アンクゥにもSS用意されてて良かった……!!)
死刑執行人の捕獲作戦に失敗してマムからも逃れ、セレスとアンクゥだけで洞窟に潜んだ夜の一コマでした。
寝ぼけた彼女に抱きしめられたアンクゥが理性と戦うも敗れてキスしそうになったりなど、本編以上にアンクゥの恋心が描写されていて、幸せなお話でした。
そして、本編救済エンドのその後のお話に。
なんと、アドルフのSSと繋がっているお話でした!!!!!
アンクゥの救済エンドSSが、アドルフの救済エンドSSと繋がっていて同じ時間軸にあるということは、やっぱり救済エンドはアンクゥにとっても救済だったんだなあと。
墓の前で自分に語りかけてくるように独り言を続けるアドルフにうんざりしてきていた彼は、セレスを墓の前まで導き、アドルフの独り言を聞かせてやるのでした。
アドルフSSでセレスはアンクゥの声を聞いたような気がして墓へと誘われましたが、本当にアンクゥが呼んでいたという。そして墓に腰掛けて苦笑いをするアンクゥが見えた気がしたのも、決して幻ではなかった。
確かに見守ってくれているアンクゥがそこにいました。
アンクゥである自分しか知らない彼女との思い出があって。
今のアドルフは自分も知らないアドルフになっていて。
最終的には完全に別人となった彼ら2人だったのでした。
来世があればきっと、お互いが最大のライバルになるはず。
余談1:終遠のヴィルシュを終えて(総括)
ということで感想すべて書ききりました。全てコンプしてから攻略順で書いてってたので、これが本当に最後です。
この記事1万字超えました\(^o^)/誰が読むのこれ???????
自分の思ったことだけ書けばもっとさらっと簡潔に終われるのですが、ついつい思い返す用にがっつりあらすじを書くスタイルなんですよねえ私。感想って後から自分が見返すのが一番楽しいので。
終遠のヴィルシュ、本当に良い作品でした。
2021年では一番じゃないかなと思ってます。
救いをちらつかされては絶望に突き落とされる。救済はまだかまだかと絶望を重ねる日々。←この一文だけ見ると乙女ゲームの感想に見えないよ(笑)
そして絶望の果てに辿り着いた救済。
この「救済」というのもどこまでも「救済」なんですよね。必ずしも万事解決ハッピーエンド☆ではない。
そして「救う」ということは前提に「絶望」があるということで。
安易にハッピーエンドやバッドエンドという題目にせず、【絶望エンド】と【救済エンド】としたのはグッジョブと評するに尽きます。
余談2:当サイトの攻略記事について
当サイトでは攻略記事も掲載していますが、攻略の書き方も迷ったなあ……。
最初に自分がプレイしたとき、全て良い方の選択肢を選んで好感度MAXだったはずなのに絶望エンドに辿り着いたことが衝撃で。
その絶望を他の人にも味わって欲しかったので、第三幕以外の【絶望エンド】と【救済エンド】は伏せ字にしました。初見でどのエンドに辿り着くかわからないように。
一人目で絶望にしかいけないというのが分かれば他もそうなんだろうなあと予想はつくかと思いますが、制限解除でプレイできるイヴなら救済エンドも見られるのでは……!?とちょっと期待を抱いたりするじゃないですか。私はそうでした。
なので皆さんにも最後までドキドキしてほしくて(笑)そして皆等しく絶望に突き落とされるのです。
第三幕については、まさか二人が同一人物だとは思っていなかったので、第三幕というのは二人の共通ルートで、どこかからそれぞれの個別ルートに分岐があるんだろうなあと思ってました。
公式でも二人は別人にしか見えないように、キャラクター紹介やプレイムービーなどでプロモーションされていましたし。
この真実と驚き、そして謎は大切にしなければならないと思い、アンクゥとアドルフは攻略記事をまとめたページでは別々にリンクを貼ったりしてます。
まとめページは一番人の目に触れるため、プレイ中の人が第三幕の存在にできるだけ気づかないように。
本当は攻略記事もアドルフとアンクゥで別々に分けて、同じ内容で二人分の記事を作ろうかなと思ったのですが、そこまでするとややこしくて読者の利便性が損なわれると思って辞めました。
それから第三幕のエンディングは、【救済エンド】と【終遠エンド】のみ伏せ字にしておきました。
先述の通り、途中から個別ルートに分岐するのでは……!?というわくわくをできるだけ長く持っておいて頂きたかったことが大きな理由です。
ちなみに、第三幕だけはエンディングに制限はありませんので、実は救済エンドを先に回収することも可能です。当サイトでは伏せ字にしながらもあえて終遠エンドの方を上に載せていました。
当サイトの攻略記事を利用してプレイしてくださった方、メタ読みせずに最後までわくわくし、そして正しく絶望できましたでしょうか?
新鮮な気持ちで真相に辿り着き、そして絶望し、最後に救われていたならば幸いです。
ここまで読んでくださった方、1年で1人くらいいたらいいなあというレベルでいないかと思いますが、ご閲覧ありがとうございました!