総評レビュー&総合感想です。ネタバレなし。
購入しようかどうか迷っている人の1つの指針になれば幸いです(*’▽’)♪
※個人的所感ですので参考程度にお願いします
※気を付けていますが、1ミリのネタバレも許せない、まっさらな状態でプレイしたい!という方は回れ右推奨です。
総評レビュー(ネタバレなし)
シナリオ
全部で12章構成となっており、1章~3章が共通ルート、4章以降が個別ルートとなります。共通ルートは1~2時間ほどで抜け個別ルートへ入りますが、4章以降も個別ルートの中に共通部分が挟まれながら進んでいくため、完全な個別ルートは7章くらいから展開されていきます。プレイ時間としては1周目10時間、2周目からは5~6時間ほどになるかと思います。
時代背景に沿った話言葉や生活様式が物語内に反映されていて、違和感なく源平合戦の世界にのめり込んでいけます。本作の特徴である主人公の男装についても、設定がしっかり練られておりちゃんと意味のあるものとして描かれていたため、矛盾もなく男装主人公の物語を楽しんで追っていくことができました。2人、3人と進めるうちに明らかになっていく謎もあり、そちらも楽しめる要素の一つとなっています。
エンディングは恋愛エンドと悲恋エンドがあります。恋愛エンドはそこに辿りつくまでにシリアスだった分、幸せを感じられる結末になっていました。悲恋エンドは短いですが、後引く切なさの残る結末が見られます。ただし、キャラクターによってはあっさり終わってしまう悲恋エンドも見受けられたので、こちらは賛否両論あるかと思います。私は2本ほど気に入った悲恋エンドがありました。RED作品の悲恋エンドはBGMやエンディングムービーなどの演出も込みで悲しい気持ちにさせようとしてくるので個人的には好きです。
残念だった点としては、話の大筋がどのルートも一緒で、周回を重ねるにつれ新鮮味が無くなってしまったところでしょうか。攻略キャラクターによって主人公が属する場所や立場、心情などは変わってくるのですが、それでも同じ戦場の軌跡を全てのルートで辿るため、どうしても飽きがきてしまいました。話は全体的に面白いので初見プレイはわくわくしながら存分に楽しめただけに、もう少し個別ルートで独自性が欲しかったなあと思ってしまいました。
キャラクター
攻略対象キャラクターは5名。冷酷非情な兄、腹の読めない敵将、戦いに拘る好敵手、忠誠を誓ってくれる従者、生まれた時から一緒にいる幼馴染……と妄想の広がるメンバーが揃っています。
それぞれに「宿命」や「天命」があり、動乱の世で自分がどうあるべきかどうかを考え、戦に身を投じていきます。その中で、主人公と出会い絆を深め考え方が変わっていく彼らの姿も見どころ。
主人公の遮那王は戦うヒロインちゃんです。生まれてからずっと男として生きているので、言葉遣いや立ち振る舞いもしっかり「侍」です。率先して将として戦場を駆け抜ける姿は格好よく、自分の宿命に対し時に迷いながらも進んでいく彼女には好感が持てました。
あとは何といってもサブキャラクターです!「ifエンド」が用意された4名はメインに劣らずキャラが立っていて非常に魅力的。ifエンドは用意してくださって製作者様側には感謝の念しかありませんが、キャラが良いあまり短く物足りなさを感じてしまったので、サブキャラであと1人3時間は物語を読みたいくらいです。ビルシャナをプレイされた方の中には、一番好きなキャラクターがサブにいるという人もいるんじゃないでしょうか。
個別ルートに入るとキャラクター同士の掛け合いはあまり見られなくなりますが、共通部では主を囲む家来組が主ガチ勢なのが面白おかしく、かつ可愛くわちゃわちゃしてるところが楽しかったです。
糖度
シリアス8割、甘さ2割くらいの体感でした。ほぼ戦っているので世界観的に間違っておらず、時々見られる甘いシーンが際立って映るのも良かったと思います。
日常の中の甘いワンシーンも良いですが、敵同士となる攻略キャラクターもいるため、戦闘に身を投じる中で生じる葛藤や切なさが絡むシーンも見どころでした。
恋愛エンド後のエピローグは終始にやにやが止まらないルートもあったため、画面暗転に注意です(笑)
グラフィック
数ある乙女ゲームの中でも、立ち絵・CG共にイラストはトップレベルで綺麗だと思います。線も塗りも光彩の入れ方も細部まで丁寧でずっと眺めていたくなります。骨格もしっかりしていて、瞳の描き方もリアル寄りで綺麗。
スチル枚数は差分カウントなしで12~13枚と標準的で十分なはずなのですが、絵が好きすぎて(←感じ方には個人差があると思いますが)もっと見たい!物足りない、となってしまいました。
背面の立ち絵ありで剣を持って戦う姿の差分もいくらかあり、それがよく動くので臨場感に一役買っています。
メインキャラ、サブキャラ共にそもそものキャラデザが素敵ですね。歴史もののキャラデザって和服な上に戦装束などを違和感なく二次元に溶け込ませるのが難しいと思うのですが、うまく融和していて服装もキャラクターの個性が出ていて良かったと思います。
システム
いつも通りのオトメイトシステム。最近は標準機能になりつつある選択肢スキップも搭載されています。
今作は共通ルートの愛キャッチに最初、戸惑いました。選択によって5色の花のいずれかが開花する仕様なのですが、複数同時に開くので誰がどの色か慣れるのに時間がかかりました。好感度とは別に、主人公のパラメーターもありエンディング分岐にかかわりますので、久々に分岐が難しくやりがいのある乙女ゲームでした。フローチャートがあってよかった。
BGMも戦闘シーンは和風ロック調のものがかかって疾走感が得られたり、悲恋エンドのエンディングで流れる音楽が悲哀を誘う曲で一番のお気に入りでした。悲恋エンドはエンディングムービーでぜひ曲名に注目して頂きたいです。OPムービーはもちろん、恋愛エンドのムービーも素敵でプレイを終えた後に何度が見返したりもしました。
残念だった点としては、スキップが遅かったところが挙げられます。もっさりしてます。あとは、フローチャートシステムは見やすくて機能自体は良かったのですが、自分が通ったシナリオしか表示されないので、エンディングの取り漏らしが分からないようになっていました。
クリア後のおまけは特にありませんでした。本編がシリアス多めだった分、甘い後日譚は文章だけのSSでいいのであったら良かったのにな~と。各種の特典小冊子にはばっちり後日譚が掲載されていましたが(それはそれで内容は良かったです)、持っていない人は見られませんものね……。
総評
歴史で有名なあの源義経が女という設定が斬新で目を引かれる本作。シナリオも時代背景に沿って構成されており、設定も特に矛盾なくまとまっているお話でした。王道をしっかり押さえていく感じなので、玄人さんよりは乙女ゲーム初心者さん向けかなと思います。
ディレクターが『百花百狼』や『十三支演技』を手掛けた伊東愛さんなので、それらの和風ゲームが好きな人にはおすすめできます。かくいう私も伊東さんの作品のファンなので脳死で買いました。戦うヒロインって良いですよね!
CEROがDなのは主に戦闘部分によるものなので、斬ったり斬られたり殺したり死んだりというのが苦手な方は注意。シリアスなお話なのでどちらかというと重めの物語です。
周回を重ねると金太郎飴気味になってくるのでもっと独自の個別ストーリーが欲しかったというのと、ちょっとテンポの悪さを感じた部分があった(戦闘中にこちらのやり取りを待ってくれる敵とかそういうの)のが、どうしても惜しかった点です。
それ故にシナリオ重視派におすすめとは胸を張って言い難いような、でも話はまとまっていたし深みもあったからおすすめできるような、なんとも言えない状態です。明かされていく謎もちゃんとあるし、話に整合性もあるので初回プレイはとっても楽しかったのは確かです。
先に述べたとおり立ち絵やCGなどグラフィック面のクオリティが高く、キャラクターも個性があって捨てキャラがいないので、キャラクター重視の方やビジュアル面重視の方なら間違いないかと思います。
もう1つ特筆するならば、源平の歴史に「詳しすぎる人」は次の目的地が読めてしまったり余計なことを考えてしまう可能性があって気が散ってしまうかもしれません。あくまでも二次元なので史実に忠実ではありませんが大まかな流れは歴史を辿ります。
源氏とか平家とか歴史の授業でよくわからん!くらいにふわっとしている方が新鮮で純粋に楽しめると思います。また、歴史の流れが分かっていても、義経が男装している女の子だというオリジナルの設定は普通に見ていて面白かったです(*'▽')
『和風』と『男装』。この2つのワードに引っかかるものがある人は、彼らが己の宿命と向き合う源平合戦をぜひ見届けてみてください!
Switch 2020/9/17 発売
オトメイト×RED
羽田浩二 伊東愛
古川慎 福山潤 河西健吾 梅原裕一郎 斉藤壮馬
新たな源平合戦が今、幕をあける